特別編「トランス脂肪酸(トランス酸)について」
2005年08月10日
研究部長 佐永田実
トランス型脂肪酸(トランス酸)について
最近、マスコミに取上げられました「トランス酸」について御説明申し上げます。
● トランス型脂肪酸(トランス酸)について
(1) トランス酸は液状の油脂を固める為に液状油脂に「水素添加」工程を施すことによって油脂中に発生し、それを利用したマーガリン、ショートニングを含む多種の食品中にも含まれております。
(2) 自然界では牛などの反芻動物の第一胃内でバクテリアにより生成され、牛乳、チーズ、バター、アイスクリーム等の乳製品の脂肪中には平均5%前後、また牛肉、羊肉にはそれぞれ脂肪中平均5〜10%のトランス酸が含まれており、トランス酸は様々な形態で古来より幅広く人々に摂取されてまいりました。
● トランス酸における最近の状況について
(1) 今般、トランス酸は悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させる。大量に摂取する事で動脈硬化などによる心臓疾患のリスクを高めるといった見地から、デンマークでは2004年1月1日から国内の全ての食品に付いて、油脂中のトランス酸含量を2%までとする制限が加えられました。
(2) また、米国保健福祉省食品医薬品局(FDA)の規則により2006年1月1日以降トランス酸を含む食品においてはその栄養成分表示欄にトランス酸の含有量を明記する事が義務付けられることになりました。
(3) この流れの中でWHO(世界保健機関)もトランス酸摂取量を摂取エネルギーの1%未満(グラム数で2グラム程度)とするよう勧告を行いました。
(4) 日本マーガリン工業会では、日本人のトランス酸の摂取量は、現在普通に見られる食生活においては国民1人当り1日に約1.56gと低く摂取エネルギーの0.7%程度で、アメリカ人の5.8g、EU14カ国男性の1.2〜6.7g、EU14カ国女性の1.7〜4.1gと比べ摂取量は少なく、日本人の食生活の現状では何ら問題無いとの見解を示しております。
(5) 内閣府食品安全委員会は、日本のマーガリン、ショートニングは米国の物と違い、水素が添加されていない未硬化植物油に部分的に水素を添加した油脂を配合したり、マーガリン等では水素添加した硬化油の配合を少なくして融点の低い物を製造するため、米国の物よりトランス酸の含有量が少なく、摂取量もWHOの勧告値の1%未満である点から、トランス酸摂取による健康への影響は小さいとの見解を発表しております。
● トランス酸の摂取について
以上を踏まえ申し上げますと、日本のマーガリン、ショートニングは米国の物と違い、トランス酸の含有量が少なく,トランス酸の摂取量も、現在普通に見られる食生活においては国民1人当り1日に約1.56gと低く摂取エネルギーの0.7%程度で、アメリカ人の5.8g、EU14カ国男性の1.2〜6.7g、EU14カ国女性の1.7〜4.1gと比べ摂取量は少なく、WHOの勧告値の1%未満である点から、トランス酸の摂取に関しましては日本人の食生活の現状で何ら問題無いと考えております。
穀類、肉類、魚介類、野菜、果物といった食物をバランス良く摂っていただくことが何よりも大切と考えております。
●参照 :「内閣府食品安全委員会ホームページ」
:「日本マーガリン工業会ホームページ」
以上