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飛天

平成6年 「七変化・雨に唄えば」

- 飛  天 -
(平成6年事業発展計画書より)

「ヨーロッパ17ヵ国の研究員による食品研究機関ジラ(GIRA)が発表したレポー卜では、1990年代の食品のトレンドとして『自然』が掲げられており、代表的食品は『果実、野菜』であるとされている。同機関によると、この欲求は時代によって、60年代までの『栄養』(代表例...牛肉)、60年代から70年代にかけての『健康』(代表例...ヨーグルト)と変化してきたという。
 フランスにおいて過去3年間連続して消費が大きく伸びている食品は、朝食シリアル、フルーツジュース、ヨーグルトである。消費者は脂肪、糖分の少ない食品、ビタミン、繊維分の豊富な食品を従来にも増して求めるようになっている。健康、美容、栄養バランスは今や消費者の共通の関心事であるが、90年代の食品は、さらに新しい品質的特性として、味覚においても素材においても『自然であること』が求められている。
 食品をめぐる潮流は、80年代以降新たな第三段階に入っている。自分の身体、生命や遺伝的に伝えられる子孫、また地球環境といった長い時間、広い空間を視野に置いて、食生活に反映させようといったものである。時代の消費者は、日々の食べるという行為が生命の基礎的な営みそのものであるという当然の知識を意識しているばかりでなく、さらに一歩進んで、『食』とは地球物質と自己存在との交流なのだということを自覚しつつあるように思われる。
 自然への欲求は『地球の住人』としての生存という社会的な価値観と同時に『自己の身体における自然さ、清浄さ』の追求という個人的な価値観を体現している。それは『食』という行為が人間の根源的な営みであるからこそ現れ易い。現在食文化の世界は大きな過渡期を迎えているということができる。その変化は、地球レベルでの大きな循環のなかに、自分自身を正しく位置づけたいという人間の本能的な欲求に根差しているように思われてならない。」(実重重実「EC食品産業の野望」)

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。

 1991年にバブル景気が崩壊し、日本経済の低迷が初まった。1992年に平成複合不況の命名のもと景気は深刻の度を増した。1993年、38年に及ぶ自民党政権が瓦解し、細川連立内閣が誕生したが、月を追って全産業に及ぶ地を這う経済環境に出口は見い出せず、清貧の思想が蔓延した。
 しかし、この厳しい経営環境の中にあっても意気揚々、隆盛の勢いで成長発展している企業は無数にある。
 年間で4600万個の「神戸コロッケ」を売り、経常利益が前年比2.3倍のロックフィールド。高脂血症治療新薬「メバロチン」を年間1000億円売り、糖尿病治療新薬「ノスカール」で500億円の販売を見込む三共。相次ぐ新製品ヒットで、不況に沈む家電業界の中唯一景気の底入れ宣言を出したシャープ。新サービス部門の在宅医療向け栄養輸液事業がフル操業で、28期連続増収増益の警備保証会社セコム。
 日本に比べてアメリカのベンチャー企業ははるかに威勢がいい。「今年の売り上げは昨年の2倍の3000万ドル(33億円)になるだろう。5年後には5億ドル(550億円)だ。」(テレビショッピング会社のバリュービジョン社)。「今年の売り上げは1億ドル(110億円)程度かな。創業5年目だから、まあ順調といえるだろう。」(中古スポーツ用品販売チェーンのグロウビズ社)。「現在85の病院を経営、売り上げは創業6年で4億ドル(440億円)に達した。」(病院チェーンのグランケア社)。

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えたとおりに成すことができる。自分が、もし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事をもなすことが出来る。つまり、すべてが自分が自分自身に課した信念のとおりになる」(中村天風「成功の実現」

 事業の『成長拡大』とは、前年よりもお客様の数を増やすことだ。前年よりも売価の高いもの、粗利益の高い新製品を開発し、お客様に数多く買って頂くことである。これ以外の成長拡大はあり得ない。
 私達はお客様を増やすために、新規訪間をくり返し、商品説明会を行い、同行訪問をお願いし、紹介を頼り、同業他者の製品を、サービスを調べ、我社の製品の、サービスの向上に努め、お客様が感動する新製品を開発し、生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ拡大できない。
 事業の『安定』とは、自分の会社で売っているものが何であっても、商品であっても、サービスであらても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買っていただくことである。これ以外の安定はない。
 だからこそ、私達は、徹底的にお客様第一主義を貫き、お客様のもとへおとずれ、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、納期を早め、企画力を磨き上げなければならない。同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し発注される全ゆる要素を、他社よりはるかに秀れたものにすることこそが、私達に課せられた安定の大テーマである。

 事業にはいつでも敵である競争相手が存在している。敵に勝つためには、敵の市場を奪う以外にない。
 私達が、いつ、いかなる新規得意先へ行っても、必ずそこには先発の敵がいる。また、私達の既存のお客様へも、絶えず幾社ものライバルが出入りし、手をかえ、品をかえ攻撃をしかけている。その中で、事業の「成長拡大」と「安定」を掴み取っていくためには、競争に勝つ態勢を採らなければならない。競争に勝つためのコンセプトは、ライバルと「差別化」することである。お客様が、私達になぜマーガリンの発注をされているのか、なぜチーズを、なぜホットケーキを......その要素をこれまで以上にもっともっとのめり込んで磨くことが、ライバルとの差別化を生むのだ。

 私達は、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。
 環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、売上や利益が順調であり続ける事ほど企業やその社員にとって幸福なことはない。
 そのためにも、私達は、私達の全ての売物を、もっと、もっと徹底的に磨き上げることが出来るはずです。「マリンフードの商品は素晴しい」「マリンフードの営業マンは実に愉快だ」「マリンフードと商売をやりたい」「うちの子供をマリンフードに入れたい」と言われる会社を創り上げることが出来れば、その会社の原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。
 今年で事業発展計画発表会は8回を数える。この間の成果は、遅々とだらだら坂を登る歩みであった。しかし、なおかつ私は精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書き続ける。
 全社員とその家族が、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の売上、必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。私は、大いなる願望(マリンドーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成6年1月29日
取締役社長 吉村直樹