飛天
令和4年 王の樹~千年の土地の守り神~
「『2021年の世相』
コロナ禍中に無事東京オリンピックの開催があり、新総理の誕生があった。しかし世界は、米国も欧州もロシアも中国も、人類平和への設計図は無いに等しい。中近東も、インド・アフガンも南米もアフリカもどこへ向かうのだろう。IT、医学の進歩や人権尊重の言葉は空高く木霊しているが、政治の現実は大戦もないのに虚ろだ。」
「『2022年の漢字』 駅
ジョン・ウェインの『駅馬車』やデシーカの『終着駅』と言う映画の端正なタイトルに惹かれる。乗換駅で目的地やスピードを変更することも悪くない。多様な人が行き交い、出会い別れる。荒野のオアシス、寂寥の光。駅の周囲に街が出来、歴史が始まり、未来を開拓する。それが時代の先端になり、人々がドラマの主人公になる。」
(とよなかチャンバー 2022年1月号)
「マリンフード㈱ 新製品開発を生命線としてとらえ、果敢に挑み続ける
■積極的な新製品開発と、大胆なスクラップ
当社は1948(昭和23)年、マーガリンの製造で食品業界への第一歩を踏み出しました。以降、マーガリンに加え、プロセスチーズ、ホットケーキ、ピザ用ミックスチーズ、各種ソース、フリーズドライ食品他、扱う品目を増やし、食品メーカーとしての業態を広げてまいりました。当社製品は、世界食品コンクール「モンドセレクション」でのグランドゴールドメダルなど、さまざまな賞を頂いており、厳しいプロの味へのこだわりにお応えする業務用から、新しいメニュー提案もできる家庭用まで、多様なウォンツを視座に入れた商品開発を進めています。
当社では、年間約200の新アイテムを出し、現在のところ総登録件数は1,000件です。ただ、アイテム数を増やすだけでは、収拾がつかなくなり、効率も悪くなりますので、スクラップしてゆくことも必要です。スクラップが年間150前後なので、新商品の数と差し引きして約50増加し、単純計算では、10年で500、20年で1,000ほど総アイテムが増えていくことになります。
商品をスクラップするということは、営業マンにとっては中々辛いことです。量が出ていない商品でも、それなりの思いがあって買って下さるお客様に「すみませんが、この商品は製造中止になります」と言うのは容易ではありません。毎年、そのつらい交渉をして乗り越えて頑張ってもらっています。これまでにない何か斬新なもの、他社にない特徴のあるものを開発することも容易ではありませんが、それと同様に、お客様がついている商品をスクラップしていくことも重要な仕事です。新商品を作るということは、その裏でスクラップされる商品があるということを、やっと社員みんなに理解してもらえるようになってきました。
しかしながら、北海道から九州、沖縄まで、地域によって様々な状況があり、あるいは各営業所や各営業マンによって、個々の商品に対する思いがあるのに、それを全く無視してどんどんスクラップしていくというのは、余りに乱暴ではないか。そういう観点から、スクラップチームを作って丁寧に検討し、6月と12月の年2回、スクラップする商品を決定しています。
スクラップは、会社の存続のためということもあります。重いものを山のように背負い続けるより、新しいものに飛びつける身軽さを持っていたいと思うから、スクラップをしている訳です。長期に亘る会社の発展ということを考えた時、新商品を作らないということはハナから大切なことを放棄しているように感じます。勿論、そんなに簡単に大ヒット商品など生まれませんが、会社を動かしている以上、新商品を出すということは、実に重要なポイントだと思います。振り返ってみれば、開発当時はそれほど売れなかったのに、当社の今を支えている商品もあり、だからこそ、研究開発を継続しています。
■顧客訪問と工場巡回を励行し、「守り」の戦略、「攻め」の戦略を繋ぐ
私は27歳で入社し、父親の死の跡を継いで30歳の時に社長に就任しました。当時は、お客様のことも、商品のことも、社員のこともよく理解していませんでした。あっちにぶつかり、こっちにぶつかり...。それでも何とか42年間やってきました。先代が亡くなり、教えてくれる人が誰もいなかったので、富士山での「地獄の特訓」に参加したり、社長業の教祖と呼ばれている人の話を聴きに行ったりもしました。そして、作り始めた事業計画書は、現在35冊に達しています。
当社は12月決算で、翌1月末に事業計画を発表しますので、原稿用紙250枚ぐらいになる計画書の準備は、毎年10月ぐらいから始めないと間に合いません。正月休みの旅行などほとんど出来ず、難儀なことを始めてしまったなぁと思いますが、続けているのは、経営上の色んなことをきちんと整理整頓できるからでしょう。
社長業の教祖と呼ばれる人は、「守り」が素晴らしい人でした。守りとは、営業なら顧客定期訪問、社内ならどれだけ工場内を歩き回っているか、ということになります。手帳に毎週のスケジュールを書き込んで行きました。北海道から九州・沖縄まで当社のお客様がいらっしゃるので、北海道なら年2回4日間。九州なら年4回8日間、東京なら年12回24日間。
これを始めて7~8年経った頃、お客様のお顔を見ないと、居ても立っても居られないほど心配で、お客様にお会いすると安心しました。何故なら、お顔に全べてが書いてあるからです。マリンフードに対して良い感触を持たれているかそうでないか。前回のクレームで、うちの商品に良い思いを持たれていないなとか、出入りしている営業マンが一生懸命やっているかそうでないかなど、すぐにわかります。
「攻め」は、一般的には新規顧客開拓になります。今、特需課は日本中の食品メーカー、農協、漁協を回っていますし、国際課は米国、アジアをターゲットに毎週テレビ会議を続けています。広域課は大手を中心に各種販売店に飛び込んでいます。ただ私個人の場合は、やはり「新製品開発」です。私どものような小さな会社で開発に取り組み、日本有数の業界紙各社から何度も賞を頂き、それなりのことをやっては来ました。しかし、どこまで本気で、どこまで解ってやっていたのか、と考えると、何も解らず、何か行き当たりばったりのところがあったようにも感じています。もっと戦略的なものが必要なのではないか。
時間は費やしています。毎週月曜日の早朝、研究主要メンバーと新製品開発のミーティングを行い、それとは別に2週間に1回、みっちり3時間、新製品開発プロジェクトの会議を開いています。このプロジェクトミーティングがなければ、当社の新製品開発はあり得ません。営業会議の冒頭は、ほぼ開発研究の発表の場となっています。最近では、海産物や果物、野菜を使ったバターなど面白い商品も生まれています。
■3つの社内大会と積極経営で
企業の骨格をより強固に、成長をめざしてこれは「攻め」というより、「守り」に近いかもしれませんが、ここ10年ほど、「プレゼンテーション大会」を開いています。今から10年ちょっと前、社内で新製品開発の発表をさせたら、これが目を覆う惨状で、愕然としました。それでプレゼン大会を始めたのです。スティーブ・ジョブズは「最強のビジネス・ツールはプレゼンだ」と言ったそうで、さすがです。様々に進化したIT関連のツールはありますが、生身の人間のプレゼンテーションに優るツールはありません。ところが、企業内でプレゼンの教育・指導をしているかというと、他人任せで、ほとんどやっていないのではないでしょうか。
2年越しの予選を行い、敗者復活戦も含め、準決勝に勝ち抜いた次回の決勝ファイナリスト6名が現在決まっています。今回のファイナリスト達は10年前とは大違いで、そのレベルの高さに驚くとともに、「継続して取り組めば、ここまで出来るようになるんだ」と、感動すら覚えました。
2022年1月の事業計画発表会兼新春パーティーで、一人10分間、6名のプレゼンが選考委員20名(半数は社外)を前にして披露され、優勝者が決まります。このパーティーには納入業者も来られ、参加者は全部で500名ぐらいになります(今回は5会場に分散)。
パーティーの中では「パソコン大会」も開きます。これも予選を勝ち抜いた10名がすでに決まっており、設置されたパソコンに向って一斉に課題に取り組み、スピード、正確さ、英文対応などを競います。また工場での配線や、機械・装置の修理は、生産サイドの人間には避けて通れないものなので、これがきちんと出来るかどうかを判定する「工務大会」を夏に開いていて、女性の優勝者も出ました。
2020年、当社は初めて主要製品であるチーズメーカー1社を事業譲受いたしました。それまでも幾つかの案件はあったのですが、なかなかご縁がありませんでした。M&Aのお話が来た時、譲受する会社が、我社でそれまで培われたノウハウを、いかに活かすことが出来るかというマネジメントの問題をクリアできれば、今後もM&Aを検討していきたいと思っています。
海外に関しては、台湾、香港、タイなどに販売しています。今一番のターゲットはアメリカですが、現在の状況から、そう簡単には進んでいません。アメリカではブローカーが営業をやっていると言っても過言ではなく、当社も6名のブローカーと契約し、これもスクラップアンドビルドを繰り返し、「成功するまでやめないぞ」という覚悟でチャレンジし続けています。
メーカーは「商品開発が命」。やっていて辛いけど、面白い。素材・アイデアは無限にあります。人々があっと驚く斬新な商品を世の中に出していけるよう努めてまいります。」
(合理化2022.新年号)
マリンフードに6つの企業の道(マリンウェイ)がある。
Ⅰ.本業
当社の事業の中核は食品とする。食品を開発し、生産し、探究し、販売する。
Ⅱ.成長拡大
当社グループの進化と当社グループに働く社員の幸福は、当社グループが永遠に成長拡大して行く過程に実現する。成長拡大目標を設定し、戦略戦術を駆使し続ける。
Ⅲ.創造
企業活動の創造とは、差別化、NO.1の達成、付加価値の発見を継続し続ける力である。それは市場に新鮮な驚きを与えるものである。無限大の市場に切り込む切り口の発見や、他社に追随しない新製品づくり、自分達のアイデア、知恵、工夫が反映された機械、設備、ラインづくり。そして文化、芸術を愛する人間づくりだ。
Ⅳ.リエンジニアリング
修正することではなく、捨て去ること。白紙でやり直すこと。再出発。野武士のごとく、不連続思考で劇的な変化をもたらせなければ、活力漲る企業として生き残ることはない。
Ⅴ.発信
生き生きとした情報が、お客様の声が、工場現場の提案が、時代の風音が四六時中社内に還元され、会社の思想、理念が社会に向って表明され続けて、企業と社会が相互主義で未来へ結ばれる。
Ⅵ.共感=共生
企業は個の集合体である。一人一人が集団の中の役割を自覚し、与えられた職務に修練を積み、リーダーの示す方向に持てる能力を発揮出来れば、企業の祝祭が生まれる。
今日もお客様からのメッセージが届きます。
「いつも全力で応援してサイトも楽しく拝見し心より癒される時間に感謝。魅力ある素敵な企画、活動、サービス作りを目指し、いつまでも愛され喜ばれ続ける事を心より願っております」。
「数ある景品の中で『美しい白』に目が止まり、美しい白...ってなんだ?と興味津々。チーズの名前だったのか!と納得。生活をちょっと豊かにする情報を、楽しみにしています」。
「マリンフードさんの商品が大好き過ぎて、商品一つ一つのルーツを知りたくて『おいしいコラム』を読むのがブームです。オススメのレシピが魅力的で本当に好きです」。
「ホームページのトップに新しいバナーが登場し、一瞬で顔がほころびました。新参の私には楽しく学べてとても良かったです!」。
「ガーリックマーガリンと私のフランス料理が、コクのある料理作りに欠かせません。以前はどのようにしてコクを出していたのか、もう思い出せません」。
「いつもムービーを楽しみにしています。ムービーを見るたびにマリンフードを好きになる気持ちが募っていきます...!日本を美味しい笑顔でいっぱいにしてほしいです」。
今年で事業発展計画発表会は36回を数える。この間の成果は、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。そして、我々は再度のコロナ禍の中「王の樹〜千年の土地の守り神〜」という新しい標語を押し立てて船出した。
私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。
令和4年1月29日
取締役社長 吉村直樹
取締役社長 吉村直樹