飛天
平成2年 事業発展計画書
- 飛 天 -
(平成2年事業発展計画書より)天人や天女が空中を飛行する様を言う。西方系は、エロスの有翼飛天、東方系は天衣を翻す無翼の飛天。時間や空間にこだわらず自由闊達な精神のありようの意に用いられる。最近では囲碁の名誉棋聖、藤沢秀行の譜がこう呼ばれた。
事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成立っている。
一つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の永遠の繁栄発展はあり得ない。事業の『成長拡大』とは、前年よりもお客様の数を増やすことだ。前年よりも売価の高いもの、粗利益の高い新製品を開発し、お客様に数多く買って頂くことである。
これ以外の「成長拡大」はあり得ない。
私達の昨年のお客様が、仮りに千五百社で、今年も同じ千五百社であれば、それは成長拡大よりもむしろ衰退を意味している。その千五百社が、今年も昨年と同じ売価で同じ粗利益で、同じ数量の受注しか出来なければ、それだけで私達の会社は、給料さえも上げることが出来ないということなのだ。
私達は、お客様を増やすために、新規訪間をくり返し、商品説明会を行い、同行訪間をお願いし、紹介を頼り、同業他社のサービスを調べ、我社のサービスの向上に努め、お客様が儲かる新製品を開発し、生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ成長できない。
全社員が、いっも、いつも研鑽しながら、他社を意識し、競争相手よりも良い物、新しいもの、優っているものを新規開拓の武器にすることが、成長拡大に結びつくのである。
事業繁栄の、もう一方のコンセプト「安定」とは、どういうことなのか。
「安定」とは、自分の会社で売っているものが何であっても、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買ってくれることである。
これ以外の「安定」はない。
たとえ、一時的に売価が高いものが売れたり、受注できても、付加価値が多くあっても、私達が売っているものをお客様が二度と買わなかったり、長い間買ってくれないということであれば、会社の安定は決して計れない。
だからこそ、私達は、徹底的にお客様第一主義を貫き、くり返し、くり返しお客様のもとへおとずれ、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、納期を早め、お客様の会社の売上げを伸ばすために企画力を磨き上げなければならない。同じお客様が、くり返しくり返し発注される全ゆる要素を、他社よりはるかに秀れたものにすることこそが、私達に課せられた安定の大テーマである。
事業には、いつでも敵である競争相手が存在している。敵に勝つためには、敵の市場を奪う以外にない。
私達が、いつ、いかなる新規得意先へ行っても、必ずそこには先発の敵がいる。また、私達の既存のお客様へも、絶えず幾社ものライバルが出入りし、手をかえ、品をかえて攻撃をしかけている。その中で、事業の「成長拡大」と「安定」を掴み取っていくためには、競争に勝つ態勢を採ることが大事である。
競争に勝つためのコンセプトは、ライバルと「差別化」することである。お客様が、私達に、なぜマーガリンの発注をされているのか、なぜチーズを、なぜホットケーキを......その要素をこれまで以上に、もっともっと、のめり込んで磨くことがライバルとの差別化を生むのだ。
「儲かるから」「値段が通るから」君の会社へ出している。「品質が良いから」「納期が早いから」「よく訪問するから」「人間性が好きだから」「マリン会があるから」「贈り物を貰うから」......。
私達は、私達の全ての売り物を、もっと、もっと徹底的に磨き上げることだ。
「マリンフードの商品は素晴らしい」「マリンフードの営業マンは実に愉快だ」「ぜひマリンフードと商売をやりたい」「うちの子供をマリンフードに入れたい」と言われる会社を創り上げなくては、一体、私達の人生は、私達の働きがいはどこにあるのだ。
私達は、永遠に成長拡大と安定を戦略課題とし、競争相手と差別化した売り物をお客様に提供し続けることを、繁栄発展の動かせない哲理としていなければならない。
私は、全社員とその家族が、豊かで明るい生活を営むために、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、私心を捨て、あらゆる困難に立ちむかい、情熱あふれる経営を推進することを天から課せられた使命だと考え、実行する。
平成2年1月30日
取締役社長 吉村直樹