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飛天

平成14年 「開拓者精神(フロンティアスピリット)」

- 飛  天 -
(平成14年度事業発展計画より)

「北条時宗は、名執権の名をほしいままに鎌倉幕府の基盤を確立した五代時頼の子に生まれた。時頼は、時宗に対しても優れた父親で、『身心を鍛えて、自分の能力に自信をもて。そして人の痛みを知り、人のためになる政治を行なえ』と教育した。
 18歳で執権となった時宗は、長老たちの献策に耳を傾けながら、幕府体制を固めた。だが、その時宗の前に未曾有の困難が迫る。
 蒙古のフビライは、中国のほぼ全土と朝鮮半島を支配し、さらに日本征服の野望をむき出しにしていた。
 フビライは次々と使者を送ってきたが、時宗はそれを拒んで、日本の自立を高らかに唱える。さらに、蒙古の襲来を予測した時宗は、北九州から山陰にかけて防衛体制をとるよう御家人たちに命じた。
 国のリーダーが率先して国土を守る姿勢を打ち出すことで、人心の動揺を防いだのである。 1274年、文永の役の襲来を退けた時宗は、逆に蒙古を討つ計画を立てて、国内の結束を図った。これによって、七年後、2度目の襲来となる弘安の役で、2ヶ月に及ぶ元軍の激しい攻撃にも耐えることができたのである。
 時宗は、この困難に当たって『莫妄想(まくもうそう)――妄想することなかれ』を座右の銘にした。あれこれと沸き起こる不安や心配に心を惑わされることなく、信念に向かって進め、というものである。
 時宗は、この禅語を肚の底に置いて、国民を導いた。そして、ついにフビライの積年の野望を打ち砕いたのである。
 経験したこともない困難な問題に対しては、肚を決めて立ち向かうことが起爆力となり、必ず将来が開けてくる―― 。(武田鏡村「北条時京」)
  
 400年前のスペインの作家セルバンテスが書いた『ドン・キホーテ』という作品がある。痩馬にまたがり、騎士道を信じ、風車に向って突進するドン・キホーテの物語が語り伝えられるのは、その夢が非常識なものであるにかかわらず、あくまで美しいからである。600年前、世阿弥は「花伝の書」を著わし「舞は能を源としているが、その舞には花がなければならない」と伝えている。6代目尾上菊五郎は、生涯踊り続けた人生の最後に及んでなお『まだ足りぬ、踊り踊りてあの世まで』と辞世の句を読んだ。

 生後間もなく突発性脱疸によって、両手両足とも肘、膝関節を切断した中村久子さんという女性がいた。結婚すること四度び、三児(一人は死去)をもうけ、七十二歳の生涯を全っとうされ二十年以前に他界された。――ヘレン・ケラーから「私より不幸な人、そして私より偉大な人」と言われた久子さんは、生前、一円の金も国家の恩恵にすがることはなかった。自分のパンは自分でかせぎ出すところに人間の尊厳が生れる。そしてその滋味の金で二人の娘をそだてあげ、充分な教育をつけて世に送りだされた。生涯の大半を見世物小屋で過ごされた久子さんの芸は、お母さんの厳しい躾のたまものでした。「ハサミを持つことは自分で考えてやること。考えてやんなさい」「ぼんやりしないで、麻でもつないでごらん」「できるまでやってみることです。やれないのはやってみないからです」。
 久子さんは、こうして口だけで裁縫も刺繍も編物も、部屋の掃除も囲炉に火を焚くことも、洗濯も包丁を使うことも、ハシでごはんを食べることも一流の腕前で出来るようになりました。  

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは、成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題として、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかのーつが欠けても事業の繁栄発展はありえない。

 20世紀最高の経営者と呼ばれ、昨年退任したGE(ジェネラル・エレクトロニック社)のジャツクウェルチ元会長は、「ビジネスにおける効率の追求には限界がない」と信じている。この信念は、「人間の創造性には限界がない」という彼の信念に裏付けられている。「人間の精神から生まれるアイデアは、汲めども尽きぬ井戸のようなものだ。だから、汲み出すだけでいい。"効率"という表現はよくない。"創造性"という言葉を使うべきだ。これは、人間を"貴い"と信ずることでもある」とウェルチは断言する。
 日産自動車に奇跡の復活をもたらしたカルロス・ゴーンが言う。「死に瀕すれば、生活を大幅に改善し、生きることにとっての重要なことと些細なことをはっきりと見抜くことが出来るようになる。私の一番の仕事は、日産が生き延び、成長し、収益を上げることであり、それが日産の全べての人々が私に望む仕事である。私は常に自分にこう言い聞かせている。任務を忘れるな。任務を忘れたら仕事をする意味がない。自分の仕事に集中出来なければ、何の成果も得られず、信じてくれる人々を裏切ることになるだろう」。

 私達は、宇宙の悠久の歴史の中で、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。

 環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど、企業やその社員にとって幸福なことはない。会社の大方針である①コア・コンピタンズ(核の力)②カスタマー・フォーカス(お客様第一主義)③スピード(速さ)④マネジメント・バイ・ワンダリング・アラウンド(経営は歩き回りながら)を武器に、未来につながるナイスカンパニー、エクセレントカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、―回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。
 今年の初出の日の年始式で、一人の社員が作った"六甲おろし"の 替え歌を皆で歌った。

1.東に颯爽と よい仕事でよい生活
  繁栄の意気高らかに 無敵のわれ等ぞ
  マリンフード オウ オウ オウ オウ
  マリンフード フレーフレーフレーフレー
2.泉大津に颯爽と お客様がいちばんと
  信条のもと溌刺と 勇往邁進
  マリンフード オウ オウ オウ オウ
  マリンフード フレーフレーフレーフレー
3.マーガリンチーズホットケーキ 鍛えて挑む未開地に
  勝利より燃ゆる栄冠は  輝くわれ等ぞ
  マリンフード オウ オウ オウ オウ
  マリンフード フレーフレーフレーフレー

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深<思い、考えたとおりに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事もなすことができる。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる」(中村天風「成功の実現」)

 今年で事業発展計画発表会は16回を数える。私の余技で使う筆名は「都会の牛」だが、この問の成果は、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。しかし本田宗一郎氏は次のように言っている。「俺はこれまで一回も失敗というのを経験したことがない。成功するまであきらめずに続けたからだ」。
 3年前に、敬愛する日本経営合理化協会の牟田学理事長から、その著書の中で「吉村社長は見事な状況判断である。実行力も優れている」と過分な言葉を頂戴し激励していただいた。
 私は今ふたたび、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 今年のテーマは『開拓者精神(フロンティア・スピリット)』で初の国際事業である中国大陸進出元年でもある。
 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。


平成14年1月26日
取締役社長 吉村直樹