飛天
平成13年 「未知との遭遇(2001年地上の旅)」
- 飛 天 -
(平成13年度事業発展計画書より)「東京・渋谷を震源にする若い女性の"厚底靴"の流行がアジアの隅々まで行き届いている。中国の武漢、ミャンマー、フィリピン、マレーシア、韓国、台湾等々。同じ渋谷発の不自然なまでの日焼け顔と白い口紅が特徴の"ガングロ化粧"も"厚底靴"を追いかけ急拡大している。回転寿司、ラーメン屋、100円ショップなど最近流行の"日本文化"はほぼ全地域で見られる。韓国の若者対象に『欧米文化より日本のモノの方に関心を覚えるか』とずばり聞いた意識調査がある。これにイエスと答えた若者は6~7割に上った。米国のテレビドラマ"フレンズ"の香港での視聴率は2~3%で、日本のテレビドラマ"ひとつ屋根の下"は20%である。香港の女子大生ジョビイさんの部屋を埋めるオーディオ機器は全べて日本製。壁のポスターは福山雅治と浜崎あゆみ。朝はMDで目を覚まし、20分の通学時間に聴くのは日本の音楽。朝起きてから夜寝るまで日本、日本、日本。『渋谷より吉祥寺が好き、特に井の頭公園に向かう途中の道がいい』と2度旅行に行った日本を語る。"東京ラブストーリー"を見た上海の女子学生は白い厚底靴にあごまで届く長さのパーマヘア。『私も鈴木保奈美のようにモノをはっきり言いたいタイプなの』。ここにも日本のドラマで恋愛感を作ってしまうアジアの女性が1人いる。日本の若者文化がなぜ受けるのか。日本のモノはかっこいいのだし、かっこいいと思うように上海女性の目だって変わりつつあるから。若者文化自体、アジアの過去にはなかった。その空白を日本のカルチャーが埋めている。アジアの若者にとって、同世代の共感をもって羨望できる対象は今、日本にしかない。台湾で爆発的に売れた松下通工の携帯電話のテレビCMがある。セリフは全べて日本語である。若い日本人女性が携帯電話を駆使して2人のボーイフレンドをきりきり舞いさせる。日本のトレンディードラマを彷彿させる内容だ。 CMの放映が始まると、その反響は凄まじかった。GD90を求める若い女性が販売店に殺到し、売り切れ店が続出。需要に供給が追いつかなくなり、一時はプレミアム価格がつくほどの大ヒットになった」。
(日経ビジネス2001年1月15日号)
マスコミが日本の墜落や沈没を煽りたてている時、"今時の若もん"文化がおじさん達の錆ついた頭をいとも軽やかに乗り越えて、アジアの若者を席巻している。彼らは日本のGDPが世界2位の500兆円あることを誰も知らない。日本の首相も誰も知らないが、彼らは日本発の最新のカルチャーを200%享受しようとしている。
1,000年の昔、紫式部が世界最古の長編小説『源氏物語』を生み、世界最高峰の文化を花開かせて以来脈々と続く文化の流れがある。世界最大の領土を支配した『モンゴル帝国』が唯一領土獲得に失敗した日本。信長時代、日本は世界一の鉄砲生産国家になったが、それは種子島に鉄砲が伝わってからたったの30年しか経っていない。江戸の浮世絵はヨーロッパ画壇に鮮烈な衝撃を与えたし、世界初の無血革命『明治維新』は『世界歴史の奇跡』、戦後焼跡からの復興は『世界経済の奇跡』と賞賛された。日本を一度だけ訪れたアインシュタインが言っている。「もし神様が存在するとしたら、日本は神様が世界にくれた唯一の贈り物」と。
現在も、21世紀に最も花開くと言われる遺伝子関連特許取得上位13社中6社が日本企業だし、激増する世界人口を養う食料のキーを握っているイネの遺伝子配列を解明するイネゲノムは日本が最先端にいる。 NTTドコモのアイモードはマイクロソフトのビルゲイツにショックを与えたし、米国の政府系研究機関が表わした『21世紀に対するアメリカの科学技術戦略』の中で、アメリカの理工系の学生に日本語教育をやれという驚くべき提案がされている。これから日本の科学技術と組むには、言葉が分からなければ仕事にならないという主張である。これだけ経済活動の規模が巨大で、広範囲に多くの研究成果を生んでいるのは世界中で米国と日本だけだ。世界地図の中で、東アジアの片隅に弓なりにへばりついているけし粒のような小さな島国。資源のほとんどを海外に求め、日本語しか喋べれず、ユダヤ、インド、華僑、アラブ商人のような度胸もない、ナイーブで内気な国民性。今、我々はそこから21世紀へ舟出した。
事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
一つは成長させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して初めて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかのーつが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。
その繁栄発展をめざし、マリンフードは4つの大方針を持っている。
1.コア・コンピタンス(核の力)
2.カスタマーフォーカス(お客様第一主義)
3.スピード(早さ)
4.マネジメント・バイ・ワンダリング・アラウンド(経営は歩き回りながら)
我々の会社にとって"核"となる力がどこにあるのか。何か自分の本業であり、自分かどの分野で戦うべきかを知り、そこへ経営資源を集中しそこでNo.1になる。いくら企業の規模が大きくても、コア・コンピタンスを見極めないまま事業をやみくもに拡大したところで勝算はない。世界の波の中で沈む。中小企業だから大企業に負けるのではない。『自らが勝負できる分野を見定めぬまま事業を展開するから、大企業に負ける。』
市場で戦うにはお客様の嗜好が欠かせない。常に揺れ動く激しい変化の時代に信じられる唯一の確実な指標こそ、お客様なのである。何度もお客様のもとへ訪れ、お客様の本当のニーズ、期待、不満を読み取り、新たな製品、サービスを市場に送り出す。
お客様とともに変化の時代を乗り切って行く時、不可欠なのはスピードである。市場の変化は、実に素早くダイナミックだ。絶えず変化する世界では、じっとしていることは危険である。間違った決断をしても、素早く修正すればダメージを最小限に抑えることが出来る。変化が激しい世界では、今日正しかったことが、明日も正しいとは限らない。そうした不確実な世界での競争に生き残り、成長市場に地歩を固めるためには、企業も変わりつづけるしかない。
そして、全べてのヒントはビジネスの現場にある。ビジネスの現場を自分の足で歩き回り、自分の目で見た時、変革は力強いバックボーンを持つことが出来る。
私達は、宇宙の悠久の歴史の中で、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。
私達は、はたして運が良いのだろうか?運が悪いのだろうか。もう一度生まれて来る機会が与えられるものだとしたら、私達はどんな時代、どんな人生を選ぶだろうか。
私達の携わっている食品事業は、バブル経済はもとより、家電、電子業界や情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道でローテク、保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かって食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることのない嗜好性だと言われている。過去1年間に生まれて初めて食べた食品があるだろうか。しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に何回でも幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事もなすことが出来る。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる」
(中村天風「成功の実現」)
今年で事業発展計画発表会は15回を数える。この間の成果は、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。しかし、本田宗一郎氏は次のように言っている。「俺はこれまで一回も失敗というのを経験したことがない。成功するまであきらめずに続けたからだ」。
私は今ふたたび、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
私は、この必達の売上、利益確保のために、お客様第一主義を採り、競争力を強化し、新しい市場開拓を行い、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。
平成13年1月27日
取締役社長 吉村直樹