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パブリシティ

新聞 日本食糧新聞 2022年9月5日(月)

スティリーノ需要拡大

川村敏美

取締役研究部長
川村 敏美

 マリンフードが製造・販売する植物性チーズ「スティリーノ」のニーズが高まっている。チーズよりも安価に提供できる価格訴求力に加え、健康志向・環境配慮などの付加価値提案で「コストも重要だがライフスタイルも重視したい」という顧客インサイトを巧みに捉えているためだ。今期は食の本質的な魅力である"おいしさ"をブラッシュアップし、参入企業が急増するプラントベースフード市場で競争優位性を高めていく。
 「スティリーノ」は、チーズに含まれる乳脂肪を植物油脂に置き換えた代替チーズとして2007年に誕生。当時は原料チーズの高騰で各社が値上げに踏み切る苦しい時期にあり、「当社も大きな打撃を受け、苦境打開のためにチーズ代替品の商品化に着手した」と川村敏美研究部長は振り返る。40年ほど前から代替チーズの研究を開始していたことが功奏し、試行錯誤を重ねながらも短期間で商品化を実現。ギリシャ語の「ステノ(未来・先進)」と「ティリ(チーズ)」を合わせた造語「スティリーノ」と名付け、その後事業の柱となる代替チーズ市場へ参入した。 
 同社は「低コスト化」と「付加価値化」を同時に実現しながら市場開拓を進める戦略を取った。家庭用販売時には、植物性原料を使用する利点を生かし「コレステロール95%オフ」とパッケージに大きく記載して健康訴求を図った。その結果、生活習慣病や体質改善を課題に持つ顧客からの支持を得て、「健康的かつ経済的」な商品として予想を上回る勢いで売上げを伸ばした。
 現在はチーズののびる物性を忠実に再現した「私のモッツァリーノ シュレッド」、乳脂肪のほか乳タンパクも植物性に代替した完全植物性チーズ「私のヴィーガン97%植物シュレッド」、チーズを混合した「香り立つ燻製(くんせい)チーズブレンド」など、多彩なラインアップで顧客に「選ぶ楽しさ」体験も訴求する。
 「今期は原材料費のほか物流費・光熱費も高騰して厳しい環境下にあるが、コスト高に圧されているのは他社も同じ。味に遜色(そんしょく)なければ『スティリーノ』に切り替えたいと声をかけられることも増えた」と川村氏はいう。「だからこそ今、切り替え後の定着化のために"おいしさ"のさらなる向上が必要」とし、冷めてもやわらかさを保持する食感、コクのある味わい、熱した時の香り、食欲をそそる焼き色など、チーズよりもチーズらしい味わいを追求して改良を進めている。
 これまで「スティリーノ」の名称を前面に出す売り方をあえてしてこなかったが、「ある程度市場シェアを獲得できた段階で、植物性チーズの代名詞が『スティリーノ』となるようなブランド戦略にも注力していきたい。いつも買っていた商品が、実は『スティリーノ』だったと、自然な流れで浸透するのが理想」と川村氏は「スティリーノ」の未来を語る。