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日本食糧新聞 2021年2月26日(金)
代替乳製品最前線~代替チーズ「スティリーノ」とその未来~(第2回)
~チーズの特徴を再現するために~
マリンフードが開発したチーズ代替素材「スティリーノ」について解説する連載第二回目の今回は、本物のチーズのような物性を目指し、試行錯誤して開発したスティリーノの主な原料について、同社研究部の魚井伸悟氏、小林泰丈氏、妹尾詩織氏が紹介する。
代替チーズが文字通り"チーズの代わり"に使用されるためには、チーズと同様の特徴を持つ必要がある。市販のナチュラルチーズを見てみると、日本人に馴染みのあるゴーダやチェダー、モッツァレラなどの種類がよく見られ、その風味が受け入れられている。また、色味は白色からやや黄色で、形状はシュレッドやカット品が多い。加熱料理に使用するチーズはトースターやフライパンなど、一般家庭にある加熱調理器具でも、溶ける、きつね色に焦げる、伸びるといった物性が重要だ。スティリーノは、このようなチーズの特徴を再現するためチーズの構成成分を参考にして開発し、チーズの主な構成成分である乳タンパク、乳脂肪、水のうち、乳脂肪を植物油脂に置き換えた。
スティリーノがチーズの特徴を再現するための物性の根幹は、チーズ中にも含まれているレンネットカゼインという乳タンパクとなる。これはスティリーノの生地を形作るのに重要な原料で、加熱調理した時の食感や溶けにも大きく影響する。この原料を上手く用いることで、加熱後はとろりと溶けるが液状にはならない、まさにチーズ特有の溶けや食感を再現している。
次に重要な原料に植物油脂がある。スティリーノでは植物油脂の中でも比較的融点が高いパーム油などの油脂を使用するが、これによりスティリーノ独自の「冷めても柔らかい」という性質が得られた(詳細は第三回の連載で紹介)。植物油脂の配合量は、加熱調理後の見た目、油浮きや食感に影響を及ぼす。例えば油脂の量が多いと加熱後の油浮きが多く、歯ごたえのないマヨネーズのような食感となり、さらに色味の良い焦げ目も付きにくくなる。チーズのようなきつね色の焦げ目や滑らかな舌触りの再現には、植物油脂の研究も不可欠だ。
そのほかスティリーノの生地を形作る原料の一つに、加工でんぷんがある。加工でんぷんにはさまざまな種類があり、生地を固めて加工しやすくするもの、伸びるような弾力を付与するものなど、用途も多様だ。しかし、加熱調理後の溶けが悪くなるなど、種類によりチーズの特徴から離れるものもある。
つまり、前述した数々の原料をただ組み合わせただけではチーズとは程遠いものとなることが多く、より本物に近い代替チーズと認められるには全体のバランスが重要となる。当社のスティリーノも並みならぬ試行錯誤の末に完成した。