雑誌
月刊H&Bリテイル 2016年12月号
拡大するVegan市場に新商品投入
「私のとろ~りとろけるヴィーガンシュレッド」
「私のおいしいヴィーガンソフト」
マリンフード(吉村直樹社長)は今年8月、動物性原料を一切使用せず、27品目のアレルゲン原料も不使用の「私のとろ~りとろけるヴィーガンシュレッド」と、「私のおいしいヴィーガンソフト」の2品を同時発売した。欧米から日本へと広がりつつあるヴィーガン(完全菜食主義)市場を狙った商品で、健康や環境意識の高い客層のニーズに応えていく。
【英国発祥 ヴィーガン(Vegan)とは】
ヴィーガン(Vegan)とはベジタリアン(Vegetarian)を略した造語で、乳製品や卵を含む動物性の食品を一切取らない、従来のベジタリアン以上にストイックな完全菜食主義を指す。発祥はイギリスで、現在は欧米を中心にその概念が浸透している。健康上の理由だけでなく、倫理観や環境意識の高まりを背景にヴィーガン人口は増加しており、関連市場も拡大を続けている。健康上のメリットとして、食物繊維を豊富に採ることによるデトックスおよびダイエット、咀嚼回数の増加でセロトニンが分泌されることによるリラックス、また動物性タンパク質に起因する体臭へのアプローチなどが挙げられる。
アメリカのホールフーズに代表されるオーガニックスーパーでは、ハラール同様にヴィーガン売場が定番化され、幅広い商品が販売されている。加工食品では乳成分を植物成分に置き替えたチーズやスプレッドなどがあり、チーズは豆乳・大豆油やタピオカ粉・エンドウタンパクなど、スプレッドは植物油・大豆タンパク、大豆レシチンといった素材・成分を用いた商品がみられる。
ここ日本でも健康志向の多様化につれ、ヴィーガン市場の芽が出ている。ただ、ヴィーガンメニューを提供する外食産業も一部ある一方、チーズやスプレッドなどの加工食品は、味や品質にうるさい日本人の嗜好を満たす必要があり簡単ではない。
【顧客の声から独自の商品を開発】
そうした中で今年8月、半世紀以上のわたりチーズやマーガリンを製造販売し、近年はその技術を応用した第3のチーズ(スティリーノシリーズ)などを提供するマリンフードが、ヴィーガン市場に本格参入した。
マリンフードは明治21年(1888年)に創業した石鹸工場を前身とし、1948年にマーガリンの生産を、1961年にプロセスチーズの生産を始め、主に外食業務用を中心に業容を拡大している。1969年に現社名に改称した後、1975年にホットケーキ、77年にピザ用ミックスチーズ、84年にポーションタイプのマーガリンの生産を始め、現在はホテルや学校給食用のポーションバター・マーガリンでも高いシェア率を誇る。
同社は、「顧客の声、と世の中のニーズにあわせた商品を提供し続ける」ことを戦略の柱とし、他メーカーにない唯一の商品開発にも注力してきた。
その1つである「スティリーノシリーズ」(07年開発)は、ナチュラルチーズ、プロセスチーズに次ぐ第3のチーズと呼ばれる、乳脂肪のかわりに植物性油脂を使用したチーズ代替え素材。価格変動を受けにくい植物性油脂を使用しているため、通常のチーズよりも安価で購入できるのも特徴。一昨年には同シリーズより、ゴーダチーズと比較してコレステロール95%カットしたシュレッド品も上市している。
【1年かけ品質と味の課題をクリア】
このほど発売した「私のとろ~りとろけるヴィーガンシュレッド」と、「私のおいしいヴィーガンソフト」の2品は、動物性原料を一切使用していないだけでなく、27品目のアレルゲン原料も一切使用しておらず、ヴィーガンにもアレルギーにも対応した日本初の商品となる。
「ヴィーガンシュレッド」は、ゴーダチーズ(日本食品標準成分表2015)と比較してコレステロールを99%カットし、健康志向層を幅広く取り込める設計とした。同じく「ヴィーガンソフト」は通常のソフトマーガリン(日本食品標準成分表2015)と比較してカロリーを60%カットしたほか、コレステロールゼロを実現した。
ベンチマークとした欧米の商品をベースに、味や品質に厳しい日本人の嗜好に合うよう約1年間、研究に研究を重ねてきた。研究部課長兼Aチームリーダーの川村敏美さんは、「動物性原料不使用やアレルギー対策でなく、カロリーやコレステロールのカット、さらに味わいといった全てをクリアすることが大きな課題だった。シュレッドは加熱によりとろけるような食感が楽しめ、ソフトはコレステロールゼロを実現しながら、爽やかな味わいを楽しんでいただけると思う」という。
2品の発売以降、同社HPには「こんな商品が欲しかった」という声が続々と届いている。常務取締役管理部長の吉村厚美さんは、「欧米で広がるヴィーガン市場の、日本におけるパイオニアを目指し、商品の良さをアピールしていきたい」と語っている。