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社内報マリン

マリンフードでは年に3回社内報を発行しています。社内報の一部の記事をご紹介します。

創業130年⑲「スティリーノ受賞」(令和6年4月1日号)

取締役社長 吉村 直樹 

一. 「火の鳥」(51期指針)「大航海時代」(52期指針)
 51期(2007年)の事業計画書の文章である。
「『オセアニアを中心とする原料チーズ価格は3年前、2年前と上昇の一途を辿ってきた中で1.5倍に高騰。EU補 助金を昨年7月積みから7〜9%カットし、10月にも予想外の2.5%カットを実施。さらに深刻なのが為替で、ユーロは年明け後157円台と昨年同期に比べ20円近く高くなっている。......昨年7月から新シーズンがスタートした豪州では干ばつが深刻化している。貯水量が低く牧草のために灌漑を行うことが不可能に近い。......世界中で資源の争奪戦が激しさを増す中、海外乳製品は今や完全に売り手市場に転換。』」(帝飲食糧新聞)
 更に52期(2008年)の事業計画書である。
 「『輸入原料チーズ未曾有の〝異常価格〞。オセアニアは6割弱アップ、悲鳴上げる業界各社』。......日本のチーズ業界は、今年1年間(2007年)で3割以上高騰した分をすべて価格転嫁できておらず、すでに翌2月(2008年)から家庭用プロセスチーズの値上げを発表したR社は1〜6月(2008年)分を反映していない。今後の値上げ発表が予想される大手乳業メーカーも、ことし(2007年)高騰分転嫁が精いっぱいで来年(2008年)以降に大幅アップする原料分の反映は間に合わない。」(日本食糧新聞)
 「その嵐の中でチーズ代替品の『スティリーノ』が開発された。生産現場は手造り人海戦術で、まだ工場と呼べるラインではないが、品質の評価は驚く程高い。かって存在した同業の類似品を凌駕すると言う。......今や以前の仮称であった『ノンコレ』と呼ぶ者は誰もいない。」
 2008年の指針『大航海時代』については、次のように解説している。
 「15世紀から17世紀前半にかけて、ポルトガル・スペインを中心とするヨーロッパ諸国が地球規模の遠洋航海を実施して新航路・新大陸を発見し、積極的な海外進出を行った時代。ガマのインド航路開拓、コロンブスのアメリカ大陸発見、マゼランの世界周航などが行われ、世界史上に、近代植民地体制の確立という転機をもたらした。発見時代。」
 当時の社内報(2008年・4月1日号)に次の記事がある。
2008年4月1日号
 そして続く8月1日号である。
2008年8月1日号
 更に12月15日号である。
2008年12月15日号
 記事を読んだだけでも、製造工程や味、物性など、まだまだ改良の余地が残されているのが明らかだが、出荷数量は想定以上の成果を残したことが伺われる。(尚「イミテーション工場視察」の記事を書いた福村仁志君は、チーズ商社「ラクト・ジャパン」の執行役員として本日(4/1付)より2回目のシンガポールの責任者として着任した。)

二. スティリーノ躍進
 しかし翌年(2009年)の事業計画書になると文章のトーンが一変している。
「今や当社の『スティリーノ』は全チーズメーカー、業界紙の耳目を引いている。勉強熱心な量販店バイヤーなら必ず承知しているはずである。各チーズメーカーのチーズ代替品の中で一人勝ちの現況にある。」
 「チーズ原料暴騰に際し、一昨年開発したスティリーノ配合製品は最大限の活躍をした。5月に導入した新ステファン釜も戦力となった。各社がスティリーノ類似品の発売に追従して来たが、当社が一歩早かったことと、完成度において他社を凌駕していた。チーズ業界大手のA社の社内会議でA社品がスティリーノに『完敗』と評価された。」
 その後、市場はチーズ原料の下落局面を迎える。通常ならばスティリーノの減産局面を迎える場面ではあるが、それが起きなかった。流石に販売拡大は止まったが横ばいで推移した。理由は家庭用品の堅調さにあった。家庭用品に「スティリーノ」の名は一切出さず、「コレステロールオフ」を前面に打ち出し、健康志向品としてのブランドが浸透したためだと思われる。以来チーズ原料高騰局面を何度か迎えるが、いずれも同様の推移を辿った。
 原料高騰局面を迎えると、同業他社はいずれも雨後の筍のように姿を表し、原料が下落すると姿を消した。

  三. 次々と食品各賞を受賞
 下記は2007年末(発売)から2015年末までの約8年間のスティリーノの販売実績である。
2008年12月15日号
 2008年後半には既にチーズ価格は暴落を始めていたが、約半年分の高値在庫が日本国内に眠っていた。その後2013年初めまではほぼ4年半に渡ってチーズ原料の安定期が続く。同時に日本のチーズ消費量は2008年度で15%減少している。2007年度が約28万トン、2008年度が23.5万トンだった。追記するとこの数字は以後回復の道を歩み、2012年に30万トンを越える。当社の販売数量は2008年が7,039t(含スティリーノ)、2012年11,542t(同)だった。この間市場の伸びは128.5%だったが、当社はスティリーノ込みだが164%を示した。
 業界新聞も半信半疑ながら、スティリーノの動向を無視出来なくなって来た。時期は一回り遅いが、「好調の要因は......植物性油脂を主原料にしたチーズ代替品『スティリーノ』が、外食や中食はもとより、スーパーなどのPBや留め型商品で採用が急増。1月の本格発売から10ヶ月間の累計がチーズ全売上高の1割、10月単月では2割を占めけん引したことだ」(日本食糧新聞平成20年12月17日)。「『スティリーノ』シリーズについては、チーズ原料価格が高騰した昨年から本格販売を開始。植物油脂を主原料とした人工チーズにナチュラルチーズをブレンドした同シリーズ製品は、一般的なNCよりも3割安い価格設定と"乳製品としての風味を損なわない味わいの低コレステロール品" という商品特長が支持され、チーズ代替利用をきっかけとして一昨年一気に売上げを伸ばしたが、NC価格が落ち着いてからも販売ペースがアップしており、同社のチーズ部門の躍進に貢献している」(帝飲食糧新聞平成21年12月2日)。
 新聞記事は少し遅れて出て来たが、獲得した賞は早かった。
2009年9月 業務用加工食品ヒット賞(日本食糧新聞社)。
2011年2月 新技術食品開発賞(日本食糧新聞社)。
2015年9月 日食優秀食品素材賞(日本食糧新聞社)。
2019年3月 食品産業優良企業農林水産大臣賞(食品産業新聞社)。
2019年7月 食品産業平成貢献大賞(食品産業新聞社)。

四. 50周年2度目の北海道旅行 
 チーズ原料の高騰、スティリーノの開発等で全社が騒然としていた2007年6月、会社は創立50周年記念として2度目の北海道旅行を敢行した。
 プロジェクト委員の下田課長(当時業務課係長)の報告記である


つづく