コラール 伊織
蜂蜜についてバイヤーが知るべきこと
スペシャルティーフードニュース
2020年11月9日
マーク・ハムストラ筆
2020年11月9日
マーク・ハムストラ筆
国立蜂蜜委員会による最近のデータによると、2017年のアメリカにおける蜂蜜消費量は26万トンであった。それは、一人当たりに換算すると、約816グラム。当リサーチによると、2009年から2017年までに全体の消費量は50%の上昇を見せたという。
とりわけ地元産の蜂蜜の需要は上昇した。それは、一般的に、人々が地元産の製品を求めたこと、さらに、蜂がその地域の環境において果たす役割についてますます理解が深まったことが理由として挙げられる。
「人々は、ますます彼らの地域のコミュニティーを支えようとしています。そして、蜂は、あらゆる食べ物の受粉を助けるという特別の、魔法のような役割を果たします。そして、蜜を作るという仕事も」というのは、コロラド州ロングモントに拠点を置く国立蜂蜜委員会の代表取締役であるマーガレット・ロンバードだ。 「蜂は、地域の環境のために神が下さった、小さく、偉大な創造物なんです。」
加工された糖分の代わりとなるものとして、自然の甘味に人々が関心を持つようになったことも、蜂蜜消費の上昇を牽引している、とロンバード。
「地元の蜂蜜製品は、その食のトレンドにぴったりと寄り添うものです。」
咳の抑制から睡眠の補助、傷の緩和まで、いくつかの健康効果もまた、蜂蜜に寄せて謳われている。地元の蜂蜜を支えようとする人々はまた、季節によるアレルギー反応を和らげる他、抗酸化作用といった効能についても伝えている。
「特定の人々には良くない影響を与えている花粉ですが、その同じ花粉を摂取することによって、アレルギーの季節に人々が悩まされる不快な症状に対する自然の抵抗力を培うことができるかもしれません」というのは、ニューヨーク市に100以上の養蜂箱を持つ「アンドリューの蜂蜜」のオーナーであるアンドリュー・コートだ。
「アンドリューの蜂蜜」は、ニューヨークのユニオン・スクウェア・グリーンマーケットの他、地域のスーパーマーケット、レストラン、ベーカリーなどを通して製品を販売している。
「ファーマーズマーケットは、地元の蜂蜜を入手するための最適な場所の一つです」とコート。「人々は、ますます地元の蜂蜜を求めており、地元であればあるほど良いという印象を受けます。小さな地元の生産者から求めたいという思いがあるのでしょう。」
「アンドリューの蜂蜜」は、1800年代以来ミツバチの巣箱を維持してきた家族経営のビジネスだ。
当社は、国連本部の一階を含むニューヨーク市のあらゆるランドマークとなるビルに設置された養蜂場を維持してきた。
コートは、リテールは、遠いところからもたらされた蜂蜜よりも二酸化炭素排出量が少ないこと、また、地元の環境や人々の健康に対する良い影響といった恩恵を伝えることによって、地元産の蜂蜜の売上を支えることができると提案する。
ポール・ヘキミアンは、消費者および都市の養蜂家に蜂蜜について伝え、支えることを通して、ミツバチの保護をすることを目的とするロサンゼルスに拠点を置く非営利の自然保護団体「ハニーラブ」の代表者である。彼も又、消費者は、アレルギー症状を緩和させることを意図して地元の蜂蜜を求めていると同意する。
ヘキミアン自身もまた、少量の高級蜂蜜を生産し、少数のシェフらにそれを提供している。
地元の蜂蜜を求めることに加えて、消費者たちは蜂蜜の種類にも関心を持っていると、国立蜂蜜委員会のロンバード。クローバー、ブルーベリーやアボガドといった植物の花粉は、それぞれに異なる自然の風味を持つユニークな蜂蜜を産する。
「人々は、バーベキューソースを作るために蕎麦の蜂蜜を、あるいは紅茶に入れるためにラベンダーの蜂蜜を求めるといったことに関心を持っています」とロンバード。
カリフォルニア州パソロブレスのサプライヤー兼リテールであるCP農場は、オリーブオイルやラベンダーなどを自社生産しているが、最近、ワイルドフラワーから採れる蜂蜜の生産を開始した。
「それは、わたしたちの農場のオリーブやラベンダーから集められた蜜であり、自然の香りと風味がします」と当社。
当社のウェブサイトは、製品の健康上の恩恵も伝えているが、健康に良いとされる酵素の働きは、しかし、加熱殺菌過程において失われてしまうという。
多くの蜂蜜農家はまた、彼らの蜂蜜にトレンドの風味を添えてもいる。
たとえばアンドリューの蜂蜜は、ショウガ、海塩、抹茶、ウコン、バニラ、唐辛子などを浸した蜂蜜を提供している。
実際、唐辛子を浸したホット・ハニーは、注目を浴びつつある。
2018年の夏のファンシーフードショーの食品サービス部門の勝者は、ブラジル産の唐辛子とニューヨーク産のワイルドフラワー蜂蜜を用いて作られた「マイクのホット・ハニー」であった。
国立蜂蜜委員会のロンバードは、消費者は、オーガニックかつ加工が最小限であるような蜂蜜を求めていると言う。
「現在のトレンドというのはとどのつまり、人々は、どこから来て、どのように生産されたかがわかる、体にも環境にも良いような原材料を求めているということなんです」と彼女。
「そのために認定証は必要ありません。単に、養蜂箱とミツバチの巣があれば良いのです。」
地元の蜂蜜は、カクテルや蒸留酒にも好んで用いられている。
ルイジアナ州のホテル・インディゴ・ベイトンの総支配人であるバリー・ガンボールドは、ホテルの屋上スペースを養蜂場とし、ホテルのバーでカクテルに用いたり、VIPゲストへの贈り物とするための蜂蜜を生産している。「巣箱から採取する蜂蜜ほど素晴らしいものはありません」と彼。
蜂蜜は通常、カクテルに簡単に用いることができるよう、温水とブレンドしてシロップ状にしておくのだという。
カクテルに用いたり、パンや菓子を焼くために用いたり、あるいはバーベキューソースに加えたり、あるいはアレルギーを緩和させるために瓶から直接スプーンで摂取するなど、蜂蜜はアメリカ人の食において、欠かせない要素となりつつある。
蜂蜜を収穫することはしかし、「苦痛そのものです」とガンボールド。
当ホテルはスクリーン上で操作することによって蜜が採取できる自動装置を設置してはいるものの、それでも、従業員は蜂に刺されることを覚悟していなければならない。
スタッフは蜂の毒から身を守る保護服を着用しているが、その他の困難もある。
ニューヨークの「アンドリューの蜂蜜」のアンドリューは、ビルの屋上の養蜂場は、交通と格闘して駐車場を探さなければならないこと、蜂が入った箱を持って階段を上り下りしなければならない、といったことを挙げる。
「それらすべてを乗り越える方法は、ただ鍛え上げた筋肉と忍耐力だけです。そして都市の養蜂家にとっては、よりそうであるということなんです。」
それは、労働集約的なビジネスである。労働コストは、実際、養蜂家のコストの約半分を占めると、国立蜂蜜委員会のロンバード。
「彼らは、非常に良く働く人々です。愛の骨折りとはこのことです。養蜂家の仕事について、派手なところは何もありません。
ただ生産するものにプライドを持ち、何世代もに渡って仕事を継いできた人々です。」