指針「黄金の騎士～生は戦いなり～」

取締役社長　吉村 直樹　

一. キッシンジャー
　第一級の知性とは、二つの相反する考えを同時に持ちつつ、しかもきちんと働く知性であり、人生の予期せぬ出来事に遭遇しても適応できる知性である。これが戦略の真髄ではないかと私は考えている。言い換えれば、長期的な目標と短期的な臨機応変とを調和させられる能力だ。
　完璧な柔軟性という考え方は、素人の幻想にすぎない。全ゆる偶発事がどれも等しい確率で起きるとの前提で政策を立案するのは、我々の仕事を数学と混同している。全ゆる出来事に備えることは不可能であり、敵が完璧な柔軟性を備えていると仮定すれば、こちらは行動不能に陥ることになる。
　おだやかな海で針路を決めるほうが、大嵐の海で針路を定めるより難しいかも知れない。自然の脅威は、生き延びるための創造性を与えるからだ。

二. 黄金の騎士
　オーストラリアの画家グスタフ・クリムトの油絵だが「黄金の鎧をまとって直立し、前だけを見て前進していく姿勢」を表している。鎧はマスクかも知れないし、ワクチンかもしれない。グスタフは無理解な世間の嵐と戦っていたようだが、それは新型コロナウイルスかも知れない。

三. 昨年の事業報告
　売上は290億円（前期比114.6％）。昨年登場した新アイテムは253、スクラップ商品は165。昨年末の総アイテムは1031。昨年末の総従業員は604名（前期末比115.9％）。チーズ類の全売上に占める比率は73.4％、バター・マーガリン類が23.5％。昨年7月1日、初のM&Aで埼玉工場が誕生した。

四. 今年の指針
　売上目標は310億円。
　新しい食品メーカーの創造を目指し、ブランドを確立する。
　A) 豊穣なレシピの提供。
　B) 絶え間なく連続するトピック。
　C) シン・マンパワー。
　D) 完全食品「チーズ」繁栄の海。
　E) 「バター」魅惑の宇宙。
　F) 朝食に昼食にデザートにシリアル国際食。
　G) 伝統の「オイルスプレッドワールド」。
　H) 目眩めく「機能性の未来」。
　I) ITに物流に革新に次ぐ革新。


五. ドン・キホーテ
　400年前のスペインの作家セルバンティスが書いた『ドン・キホーテ』という作品がある。痩馬にまたがり、騎士道を信じ、風車に向って突進するドン・キホーテの物語が語り伝えられるのは、その夢が非常識なものであるにもかかわらず、あくまでも美しいからである。600年前、世阿弥は『花伝書』を著わし「舞は能を源としているが、その舞には花がなければならない」と伝えている。六代目尾上菊五郎は、生涯踊り続けた人生の最後に及んでなお『まだ足りぬ、踊り踊りてあの世まで』と辞世の句を詠んだ。