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#10 ホットケーキのフワフワな話

研究部Bチーム課長 魚井伸悟 | 更新日:2003.01.01

2003年
第10回「ホットケーキのフワフワな話」


 ホットケーキに限らず、パンやケーキはフワフワしています。それこそケーキの土台をスポンジと呼ぶように、スポンジの様な形状をしています。他にこんな形状をした食べ物はあるでしょうか?このフワフワはどうやって作るのでしょうか?今回はこのフワフワの裏側に迫ってみたいと思います。

 先にホットケーキ、パン、ケーキのスポンジと書きました。これらの膨らませ方は、大まかな理屈は同じですが、膨らませる方法、焼きあげる時間はそれぞれに異なります。パンはご存知のように酵母を使って膨らませます。生地に練りこまれた酵母が呼吸をし、吐き出された二酸化炭素が生地を膨らませ、膨らんだ状態の生地を十数分から数十分かけてオーブンで焼きます。使う小麦も強力粉です。(小麦粉についてはおいしいものコラム第5回をご参考ください。)一方、ケーキやホットケーキは薄力粉を使います。ケーキは卵の力。メレンゲといって卵白を泡立てたもの(共立てといって卵黄と卵白を一緒に泡立てる方法もあります)の気泡力や水分の気化による水蒸気によって膨らみながら、これまた数十分かけてオーブンでじっくりと焼きます。これに対してホットケーキは銅板の表面熱だけで、しかも数分で焼き上げなくてはなりません。酵母に呼吸させたり、焼いているうちに膨らんでくるのを待っていては間に合いません。そこでベーキングパウダーというものを使います。ベーキングパウダーは熱を得ると炭酸ガスを大量に発生します。この炭酸ガスの発生で生地を膨らますのです。ですから、ホットケーキを作るときにベーキングパウダーを入れ忘れると全然膨らまず、ぺちゃんこのせんべいのようなものしか出来ません。膨らんでないホットケーキなんてとても悲しいですよね。
 ところで、この膨らむのを助けるものの一つに油脂があります。いわゆるショートニングというものです。ショートニングとはベーカリー用語で、shorten(歯切れを良いものにする)という言葉に由来しています。ショートニングは生地に軟らかさ、しっとり感、滑らかさも与えます。どのようにして膨らむのを助けるかといいますと、生地の中に散在している小さな気泡の側面を強化させます。このことにより、生地中の気泡同士が合体して大きな気泡になるのを防ぎます。もし、大きな気泡が出来てしまうと中で大きな空洞となったり、生地の表面まで浮上し、逃げていってしまいます。せっかく発生したガス、気泡を逃がさずに小さな状態で数多く抱え込むことでスポンジ状となるのです。小さな泡をせっせとコツコツ貯めることでおいしいフワフワした食感が出来るのです。
 マリンフードのホットケーキはオリジナルのベーキングパウダーを使用してふっくら焼き上げています。機会がありましたら一度お召し上がりください。